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今回は静岡の磯川さん、長い経験と強い思いをふんだんに伺いました。やんちゃの頃、たまたま入った眼鏡業界、あの先輩との出会いと縁、深く考える脳で見る目、業界レベルを確かめたい検定へのチャレンジ、病気のお客様にもっと強くアドバイスできなかった後悔、大きくなって戻ってきてくれた少女だったお客様、健康に豊かな歩みの温かさに触れてみて下さい。
3/13 (木) 12:00-13:00 開催 めがねの仲間セッション#2
磯川 進さん VHリテールサービス メガネスーパー浜松入野店
木村 克彦 日本眼鏡技術者協会
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セッション#1の模様は こちらから
<テキストレポート>
みなさん、こんにちは。めがねの仲間セッション、今日は静岡からよろしくお願いいたします。
眼鏡は、人の目に装着してレンズによる視力の補正からファッションにまで使用されるもの。一般消費者の日常に一緒について回るもの、一方で今、色眼鏡の偏った見方と言われながら、それを乗り越えて本質や未来を見るまなざしや心という大切なものになってきていると思います。
セッションは、そういったことを、店頭、技術、お客様、メーカー、個人経営から大手チェーンまでの眼鏡店、様々に関わるみなさんが、多様な毎日と経験を積まれている中に、そこでしかないワクワクと力があるに違いない、一緒に実感して前に進んでいこうというものです。
メガネスーパーの磯川さんです。今日、静岡はほとんど五月の日よりですね。
まさに春が本当に来た感じで、気温もグッと上がってきそうです。
磯川さんが今回ご登壇下さった理由はどういうものですか。
実はもっとクローズドの中で眼鏡好きとワイワイやる軽いイメージで応募させていただいたのですが、ちょっとドキドキしています。
ドキドキにも関わらず、全国にお顔出しいただきありがとうございます。前回の初回を見てどんな印象をお持ちになりましたか。
業界にはしっかりした方がいらっしゃるんだなと。志もしっかりしていて、きちんと学校で学んだり、そういう方達が増えているのだという気持ちで見ていました。
今日は、全然違う磯川さんの観点からどうなんだろうとみなさん楽しみにしています。まず、磯川さんにお話をいただき、事前に頂いた質問も突っ込みながら、今日はさらに全国のめがね仲間の声をまとめたレポートを元に談義をしてみたいと思います。
磯川です。よろしくお願いします。私は三重県の出身で1958年生まれのいい年です。高校を卒業してこの業界に入りましたが、それは、やんちゃな生活を送っていて進路も考えていなかった時に、眼鏡時計店を営む親戚に、とにかく手に職をつけなさいと入れてもらったのがきっかけでした。
その後、メガネスーパーの三重出店時に入社、神奈川への転勤を経て、今の静岡県の浜松で勤務、店舗で仕事をしながら、店長、エリア長、ブロック長を務めながら、地域のトレーナー/インストラクター、技術系教育を担当。2013年に本社の研修グループに所属した後、定年を迎え、3年前に浜松に戻ってきて今に至ります。
軽い気持ちで入った業界ですが、メガネスーパー入社直後、私のその後に大きな影響を与える方と出会いました。東京高田馬場の新規出店応援先で、当時私は経験者入社で重宝され、自分はできるんだと思う若毛の至りだったと思います。そういう私に、後の上司となるこの方は、「ねえ、磯川さん。あなた網膜10層って言える?」「そんなこと知らなくて眼鏡売れますよ」「いやいや目というのは、脳の大事な出先機関なのよ。大切なお客さんの目を預かるのに、そんなことも知らないで眼鏡販売してるの?」というキツイ一撃でした。
「せめてこんな本は読みなさいよ」と指摘された本を読み始め、眼境という雑誌も取り、その中で、クロスシリンダー二刀流、著名な先生の執筆を読んだりするうちに、眼鏡ってそんなこともあるんだなと思い始めました。
当時、眼鏡市場はぐんぐん伸びる時代、企業も社員教育に力を入れ始め、資格制度が出来、弊社でも学校を一時期持っていました。その後の上司は、この部門で教育の中心として務められました。私も、折に触れて接点を持ち、こういう部分でも勉強しないといけないんだよと、多くの刺激を受けました。これをちょこちょこと繰り返しているうちに、自身から勉強するようになっていったことを覚えています。その中で、「ものを見るのは脳ですよ」というテレビコマーシャルにもあった内容が深々と印象に残っているのです。
本社の研修部門は、社員教育が中心で外部との交流は多くはなかったため、自分たちが行っている研修や教育が業界とずれていないことが確認できるよう、その時にあった業界の認定眼鏡士試験を自分自身で受けてみることにしました。結果、SS級を取得し、ずれていないことを自覚し、自分がこのままこの研修グループに入って取り組んでいくことに確信を持つことができました。
そんな中で私の最も印象だった出来事です。ある時、糖尿病を患っているお客様が眼鏡を買いに来られました。病気のことを伺って、検査をされているかどうか、病院は行かれているのかどうか、ずいぶんお話はしたのですが、眼鏡で視力が出ているからと結局行かれなかったようでした。今から思うともっと強くお話して、視力を失わないうちにもっとやってあげることができたのではないかと忘れることができません。
今、私は年齢も年齢なので仕事も週4日しかしていない中ですが、身近な人やお客様に対して、目の役割についてどんなお手伝いができるか、眼鏡はしっかりと物を見るだけではなく、物を見る=脳の機能をきちんと守ってあげられるものではないかというのが、半世紀近く考え続けてきた実感です。そういう意味では、売れたらいいとか高いものが売れたらいいということではなく、お役に立てているこの仕事を是非、真摯にその人に合わせてあげられたらという気持ちです。
長い年月に渡る各所での確固とした実践、眼鏡に留まらないとても深い考え、磯川さんからしか聞けない非常に貴重なお話だったと思います。最初は眼鏡に興味があったわけではなかったのが、どうして今に行きついたのでしょうか。
そうですね。やはり、お話した私にキツイ言葉をくれた方の存在です。最初にお会いした後も、転勤先でも何度か一緒に仕事をすることがあったのですが、都度、いろいろなことを聞いてくるんです。フロアでフレームを見ているお客さんの様子を見て、あの人の視力はどれくらいか想像してみて。見ている距離を見れば分かるでしょとか、ポスター写真の眼底反射を見てこの人の目はどういう状態か、それが脳のシナプスの話につながったり、大きな刺激をもらいました。本を読んだり、ものを聞いて覚えていたことが、こういう会話を通して実感を持てるようになる、繋がっていく、あんまり理解できていなかったこともだんだんそういうことなのかと分かるようになって、楽しくなっていきましたね。
なるほど、こういう機会が納得感や刺激を生んで、そこからさらに勉強してみよう、深みにはまって、それが今に至るまで続いている。上司の方が直属でなくても折に触れて接点を持ってくれたことが大きい様子ですが、どうして気にかけて下さったのだと思いますか。
やんちゃで生意気だったからだと思います(笑)
磯川さんがブンブンさせる気持ちに対して、こいつは突っ込んでみようということですね(笑) 逆に磯川さんご自身が誰かを目にかけることはありましたか。
そうですね。これまでもそれぞれの店舗や機会において、興味を持っている人に対しては関わってきましたし、これからもそうしていきたいと思っています。
磯川さんがたくさん読まれた本の中で、大きく印象に残っているものは何でしょうか。
最初に読まされたのが、「眼科学」と「視能矯正」の二冊でした。はじめは眠くなりながら読んでいましたが、これも先ほどの上司が要約をしてくれて助かりました。印象に残っているのは、目というものはただ見えるだけではない、よく見えていても状況によって目は疲れますが、眼精疲労という言葉ひとつとっても屈折性の眼精疲労や外性の眼精疲労などいろいろあるんだということを学び、それをお客さんに実践して身に付けていく、またはその逆ということを繰り返してきました。
興味深いですね。疾患を持たれている辛いお客様とのお話がありました。同様のご経験を多くされてきて、お付き合いにおける考えや注意点などありますか。
眼境技能作技能士のテキストにも掲載されていますが、白内障が進行すると近視が増えるということは多くのお客さんに感謝されました。近視の度数が強くなって見えずらいという50代半ばの人とはしっかりとお話をした上で眼科に行っていただきました。この年齢でこんな短期間に度数が上がるのはおかしい、ただあまり不安に思われてもいけないので、まずは眼科に行ってみてくださいと。また、物が歪んで見えるのが眼鏡で治ると勘違いされているお客様も多いです。眼科医の先生方からは、やっぱり白内症だったので手術をしたから、また眼鏡を作ってあげてくださいと返していただいたり、そういうやりとりができるようになったのも様々な経験の積み重ねのおかげと思います。
職場のお話も伺いたいと思います。メガネスーパーさんらしさ、店舗のお仲間、全国のみなさんに自慢いただけるところなどいかがでしょうか。
今いる浜松の店舗は通称メガネ通りで、専門店からスリープライスまで様々な店舗が集まる中、どんな特徴を出していくのかが最も大事と思います。今のスタッフたちと一緒にやれているのは、そのお客様にご自身の目のことをしっかり知っていただいて、ただ見えるとか見えないではなく、どう見えているのか、疲れない見え方なのかを理解していただいた上で、レンズも合わせてお選びいただけているところが一番の強みなのではないかと思います。ただ物を売るだけというのはなかなか難しいですよね。弊社では度数の単位が0.01刻みである点が先駆けた取り組みかもしれません。今は様々なレンズが本当に進歩していて、昔と比べると全く違う中で、しっかりとピントを合わせてあげることで個性を発揮してもらうということと思います。
簡単に済ましてしまうと良くないと思います。良くなかったところの振り返りは常にしつつ、お客様に買っていただいた後の定期検査を1週間、1ヶ月、3ヶ月、6ヶ月と刻んでいく。フィードバックをいただきつつ、微調整したり、その結果をスタッフみんなで検証していく機会を増やしていくと思っています。
毎日のお店での様子が感じ取れるような気がします。そういうやりざまは、最初からあったものではなく、長いご経験の中で培われてきたものと思います。どこかで大きな変化点があったのでしょうか。
メガネスーパーとしての変化は、2012年ぐらいに会社の経営が変わったことで、各人それぞれが今に至るまでの大きな影響があったと思います。
自分の実力が業界とずれてないのかを確認するために認定試験を受けたという話も印象的でした。これは会社からのガイドでなく、ご自身で自発的に受けられたのでしょうか。
はい。落ちると恥ずかしいので誰にも言わずに受けました(笑) 当時は、社内でのランク/資格こそあれ、外部の他流試合をしてみようということはありませんでしたし、大体、外の様子が全く分からなかったので知らねばと思ったのです。
実際分かりましたか?
そうですね。私自身は、それまでの社内でできてればいいという意識から、業界全体がどうなのかが気になり始めていました。店舗でお客様と接する仕事から離れて、本社での教育に転ずる中で、今度は外に目を向けることができた。その中で、国家検定など新しい動きが皆様の努力で実現されてきたことも体感することもできました。
ありがとうございます。それらの中で、磯川さんが最も印象深かったことを今度はポジティブな面から伺います。
幼稚園の頃から大きくなるまで、私のところに通い続けてくれた女の子がいました。少し神経質な子で、フィッティングのかけ心地に敏感だったのですが、私が転勤で一度離れて戻ってきた時に、また来てくれたことは驚きでした。
60代の年配の方が、眼鏡ができたら京都の紅葉を見に行きたいと楽しみにされていて、実際行ってきたら、これが京都の紅葉なんだ、見え方が全く違ったと聞かされた様子は本当に気に入ってうれしかった様子でした。
素晴らしい、これはやめられない、深みにはまり理由がよく分かります。女の子がブランクがあっても、他でもない磯川さんを覚えていてくれたのはなぜだと思いますか。
さてどうしてでしょうか(笑)
今日のお話を伺ってその理由が分かるような気がします。ここまで磯川さんテーマでした。ありがとうございます。
次に、全国のめがね仲間の声レポートです。みなさんから様々にお伺いした内容をまとめましたので、それを元に磯川さんと一緒にお話ができればと思います。
まずは技能検定資格について、取得後、お客様からいただいた声として、元々安心してお任せしているけどさらに安心した、国からのお墨付きをもらったんだね、こういう資格があるとは知らなかったといったポジティブな内容の中にも、もっともっと確実に安心してもらえるよう努めていきたい、名刺の記載にも反応があって会話の糸口になるなど、たくさんありました。
私も名刺に入れさせていただいていますが、話がスムーズなのは信用の元になっているのだと思います。
次は、業界の長年の悲願で3年前に実現した制度に期待は高まる、資格取得後のスキルアップがさらに重要、協会や学校の先輩方の知識技術を学ぶことができました、協会がより良くなるためにさらに微力ながら貢献していきたい、お客様と眼科医から頼られる安心感のある店として、世の中に必要とされる眼鏡店になりたい、業界目線でのコメントです。
まさに私もそう思います。信頼を得られないと成り立たない仕事、眼鏡は出来上がらないと最後まで分からないものなのでお客さんとのコミュニケーションが非常に重要、さらに、本当に具合が悪い場合は眼科医との連携もしっかり取ってやってくべきと思います。
学びという意味では、今はこういうオンラインでの機会が多く、メガネ協会のリカレント教育プログラムもそうですが、さらに国際メガネ展のようなリアルな大きな場でも刺激を受けることが多く、参加しています。
学びに関してはさらにありますね。2024年に1級に合格しました、もっと技術や知識を追求したく、検定を手伝いつつ自身の勉強につながればと思っています。2023年に2級を取得しました。25年に1級に挑戦する予定です。今、若い方たちがリアルタイムで今受かったじゃあ次はとやっているのは素晴らしい、学ぶほどに面白くなる、楽しい、まずは検定から受けてみてください、さらに学びに終わりはなく同じ業界のいろいろな方と繋がって様々な情報を交換したい、我々も検定試験では多くの方々にご協力いただいていますが、全国から集まっていただく機会を接点と考えていただく、学びの新たな手法とも思っています。
そうですね。私自身はどちらかというと引っ込み思案で、今日も本当はイレギュラーなのですが、そういう機会が自然にできればいいですよね。
磯川さんのように是非一歩踏み出していただければと思います。さらに、店舗の現場からは、知見を自店舗だけではなくて自社全体に広げていきたい、磯川さんのお話と同様にそれぞれの会社の中であるようですね。アイフレル、視覚障害、リハビリテーション、ロービジョンケアなど眼科医の先生方との連携、一方で、スリープライス系チェーンではこういう技能を持った資格者が少なく重宝され忙しい、在日外国人の方と一緒になって技術を共有すること、共に仕事を楽しむことが豊かさにつながっていくなどなどです。
本当にいろいろですね。弊社にも海外の方がいらして、一生懸命取り組んでいて、スキルアップされるといいなと思います。
逆に、そういう異なる方からでしか我々が学べないことも多くあると思います。そういうつながりはさらに広がっていきますし、年を取れば取るほど必要になる眼鏡ですから、縦横の可能性がさらに多様を極めていくはずです。楽しみですよね。
もうひとつ、一般のお客様からもいただいていています。私は、40年以上眼鏡を使っているが、検定資格があることは知らず、前回のセッションを見て初めて、仕事の大変さ、情熱、励ましを感じた。顧客の目から見ると技術の高さも大切だが、最終的にはスタッフの人柄や顧客ファーストでの真摯な対応が大切。一方、販売ノルマがあるような言動、プレッシャーが気の毒な新人や知見が鼻につくベテランと厳しい見方もできる中、乗り越えて頑張ってほしいエールを送りたい、とのことでした。
様々なお客様によって、こちら側の対応次第で伝わらないことにもなり、気をつけていかないとならないと改めて思わせされます。こうやって考え、思い続けることがとても大切。毎日毎日それぞれのみなさんがそれぞれの異なるお客様と異なる体験をする中、時々慮ってみることは気付きになると思います。
最後は、眼鏡は脳や身体の健康を守るものである、かける人の気持ちを前向きにしたり感動させたりするが、反対に落胆させることもある。人の人生に影響するようなこと、快適に見ることができること、人から見られた時に素敵なこと、その人が人生を楽しむためのツールとしての眼鏡、その作成を安心して任せてもらえるようこの資格を役立てたい、というコメントがありました。
本当に共感します。繰り返しになりますが、この50年、メーカーさんの努力でレンズの進歩は大きく、違和感のない快適さはすごく良くなったと思います。様々な業界のみなさんの努力があって、さらに頑張っていきたいと思うことができるのだと思います。
ありがとうございます。では最後に、磯川さんのお考えとこれから、みなさんへのまとめのメッセージです。
眼鏡はただものを見るだけのものではない。その方その方が快適に、長くなった人生寿命において、自分の目でしっかり捉えて脳でしっかり判断していけるお手伝いをしたい。お客様には、毎日の歯磨きと同様に、目と眼鏡の関係と大切さをよく伝えていきたいと思います
私自身は、これからも無理せずに引き続き務めていきたいと思いますが、今日参加くださった全国のみなさんが同じように頑張っている、お店は違うが同じ仕事をしている仲間として、励みにしていきたいと思います。今日の場所を設けてくださった木村さんや協会のみなさんに感謝申し上げます。
いやいや楽しいセッションでした。ありがとうございます。直接の体験に根差した、深い考えのお話にとても共感できました。多くのみなさんがそうだったのではないかと思います。非常に貴重です。さらには逆に刺激を受ける側にも立っていきたいと、今度はみなさんのご登壇とお話をお待ちしています。仲間をさらに増やしていきたい意味で、まず検定は是非受けてみてください。すでに受験された仲間のみなさんや取り組みをサポートして下さっている多くの方々に感謝申し上げつつ、今日は磯川さんに踏み出していただいてありがとうございました。みなさんで拍手をお願いいたします。
本日のセッションは以上です。メッセージやフィードバックも是非お寄せください。ありがとうございました。